特集 2026年3月23日

書き出し小説大賞 301回秀作発表

書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)

雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。
著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。


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コロナ禍以降の仕事の変化で、Tシャツのデザイン販売が収入の上でも欠かせないミッションになっている。仕事なのでなんとか売れるデザインをと考えてしまうけれど、その反動で真逆の、こんなの誰か着るんだ!というデザインも考えてしまう。根が冗談で出来てる人間なので、そうやってバランスを取っているのだろうか。

最近思いついたのは「フードコートで喧嘩してる親子がプリントされたTシャツ」だ。誰が着るんだ?と思いつつ、実際つくってみたくなる。そんな自分が恐ろしい。

書き出し自由部門

春の遠心力を頬に受け、詩人の唇はブカブカとなびいた。
タカタカコッタ

春の遠心力?春一番のような強風のことだろうか?

地下室に活けられた薔薇は、きつく匂っていた。
タカタカコッタ
さあ、咀嚼し、反芻せよ、今年も。木蓮を、だ。
タカタカコッタ
ぼくを晒し者にした帰りの会、下り坂で逆向きに漕ぐペダル。
さくさく
「ここ、パパのお墓ね」庭の金魚の墓のとなりに一本、アイスの棒が増えた。
さくさく
紙ナプキンの上に、ばあちゃんはナタデココをすべて吐き出した。
さくさく

歯茎的な食感に驚いたのだろうか?

始業前のトイレは暗かった。
いずも
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親の代わりに運転するようになり、車内にはFMが流れ始めた。
もろみじょうゆ
君のレントゲン写真を舌下に入れて虹を見る。
白石ポピー
バケツにタップリの墨汁。わくわくした。
かつを
泡ハンドソープをくれた。いいひとだ。
いちもくれん

泡をもらう姿を想像してほっこりしました。

自分の身体から自然に出た音の可愛さにびっくりし、子猫でも呑み込んだのかとビール腹を叩いてみた。
prefab
「お高いんでしょ?」通り過ぎる護送車にキャリアウーマンが話しかけた。
ガンダーラ磯崎
君子危うし。
カニカマもどき

危うきに近寄らない君子が?!

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こわいかお。あの人の。もう生きていられない。
ねんねこ
春は、背中から糸が出て後ろに引っ張られるだろうが、けっして振り返ってはいけない。
葱山紫蘇子
広告が終わらず広瀬アリスが延々と驚いている。
いずも

どういう状況か分からないのに広瀬アリスっぽさがある笑

途端思い出した、初めて買ったデジタル腕時計をつけたままシャワーを浴びた感覚を。
暖簾の部屋干し
遅れてきた貴方はどこも見ていない瞳で煮込みの半熟卵を潰した。
カズタカ
ここでの思い出がいっぱいになったら旅に出よう。
井沢
あるひ あるとき おじいさんは しんでしまいました。おじいさんが じぶんの おはかに たどりついたのは 5ねんごのことでした。 
ゆうきせつ
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つづいては規定部門。今回のテーマは『それっきりの人』でした。出会いは物語をつくりますが、すれ違いは風景をつくります。思い出せない人たちが残したはじまらない物語をどうぞ。

規定部門『それっきりの人』

名刺だけがずっと財布の中に住んでいる。
早百合

顔が出てこない人の名前だけがある。

十年前、洗濯機を買った店員が、まだいる。
suzukishika

お互いを忘れてしまうという切ない展開とは逆の、お互い覚えているという気まずい展開

僕の記憶を通り抜けていった人たちもまた僕が通り抜けていった誰かの記憶のなかにいるのだろうか。
寂寥

まるでエッシャーの絵のように広がり交差する人間関係。

⏩ 規定部門『それっきりの人』続きます

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